海外の結婚式に参列したという話はよくありますが、葬儀に参列したという話はあまり耳にしません。結婚式も国が違えば違うことも多くあり、葬儀もまた宗教、国、環境により違います。
日本のなかであっても宗派により異なるのが葬儀。海外滞在中にお世話になった人に不幸があったら、悲しみと同時に初めての葬儀に「どう参列したらよいのか」戸惑うことも多いでしょう。
筆者はアメリカ合衆国北東部・ニューイングランドでプロテスタントの葬儀に参列しました。葬儀の中から感じたこと、違う中にも同じだと感じたことをレポートします。
亡くなったその後
今回、参列した方は自宅で亡くなりました。自宅で家族がご遺体に服を着せ、その後フューネラルズホーム(葬儀場=Funerals Home)に遺体が移されました。
ご遺体はストレッチャーに乗せられ下半身には薄い毛布が掛けられました。大きな冷凍庫で保存されます。
フューネラルズホームは、直訳すれば「葬儀場」。しかし、佇まいは日本の葬儀場とは違います。住宅街に溶け込み、家の前、道路の脇にある看板を見なければ、そこが葬儀場とは思えません。日本のお通夜のように最後の夜を家族が添い一緒に過ごすことはありません。遺体と対面したいときは、フューネラルズホームにを、訪ねれば会うことが出来ます。
通常3日後には荼毘に伏されますが、国土の大きいアメリカ。駆けつける家族の都合により安置する日数は決められます。
日本語では遺体であっても対面や会うという言葉が使われますが、英語ではご遺体との対面にはMeetは使われずSeeやViewが使われることに筆者は驚きました。
決められた喪服のない葬儀
日本で教会で行われたカトリックの葬儀に参列したことがあります。神父のお説教があり、賛美歌を歌いました。教会には、仏教の葬儀と同じように遺体は棺に納められ遺体との対面ができ最後のお別れが出来ました。参列する人は、黒い喪服を着用していました。
日本では喪服、略礼服の着用が必要です。日本の葬儀は、黒が常識です。
今回の葬儀は教会で行われました。ご遺体は葬儀場の中にはありません。お焼香のような形式も香典もありません。ご遺体がないので、棺の中の遺体との最後のお別れもありません。
牧師のお説教の後、子ども達、孫など家族から故人にまつわるエピソードが参列者へ共有されます。そして、賛美歌が歌われ教会内で簡単な会食が行われます。
葬儀への服装も地味な色、黒い色の服が多く見られますが、黒でなければならないということはありません。カーディガンを軽く羽織っているような服装の人もいました。
火葬だが日本とは違う。
出棺され、家族と共に火葬場へ向かうということはありませんでした。では、ご遺体はどうなっていたのでしょう。
今回は、教会で葬儀が行われた時間より少し早く、ご遺体は荼毘に伏されました。アメリカでは、今でも土葬の選択が出来ますが、今回は散骨を望んでいた故人の意思で火葬されたのです。
日本のように骨壺、木の箱、白い布などはありません。お骨ではなく、灰になります。箱に収められその上に名前、死亡日、火葬された場所が記載されていました。葬儀の翌日、普段着でフューネラルズホームで受け渡されます。
灰になった全身が箱に納められます。
故人を葬る心は同じ。
広い国土を持つアメリカ。私が参列した葬儀が必ずしも一般的ではないのかもしれません。宗教、民族、環境、その家族の考え方などで変わるものでしょう。
参列には、自分の宗教に誇りを持つ必要はありますが、故人の葬儀の形式を理解し、参列する必要があります。
どんな宗教、民族、環境であっても人間の命がいつか滅びるということは同じで、葬儀で死と生について考え、生きることへのメッセージを受け取り生きることを改めて考える場になります。国は違っても、スタイルが違っても葬儀は死者を偲び、死者を送りだし、残された者のために行われる儀式です。
筆者の家族は仏教徒です。お経とは違う賛美歌も筆者の心に染み入りました。
文:Sazu Iwai-Pawle(タイ バンコク在住ライター)
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