国際結婚した日本人の名字と言えば「スティーヴンス由紀子」や「Hiromi Davidson Watanabe」など、相手方の名字を名乗る人と旧制と併記する人がいると思いませんか?実は日本人が国際結婚する場合、名字の選択肢は「5つ」もあるのです。本記事では、私自身の経験を事例に、国際結婚時の姓名についてレポートします。
まずはおさらい!日本人同士の婚姻
日本の民法では、婚姻後男性または女性のいずれかの氏にします。必ずカップルのうち一方は氏を改めなくてはなりません。
これまで、男性の氏が選ばれることが多くありました。戸籍制度は、夫婦を基本単位としているので、氏の改氏に伴いどちらかの戸籍に入ることになります。近年、女性の社会進出などが進み、どちらか1つの氏を改氏することで不便、不利益があると指摘が多くあり、選択的夫婦別氏制度の導入が求められる意見が審議されていますが、まだ答えは出ていません。
外国人との結婚は、夫婦別姓が可能。
外国人との婚姻届を区役所に出すと名字は変わりません。結婚してもどちらかの氏に改氏をするように言われることもありません。区役所は、スムーズに受け取ってくれます。
これでいいのか?国際結婚している人は、どうしているのか?
そこで、国際交流会館の相談窓口に聞いてみました。姓をカタカナと日本名の名前を使っている人もいる、どんな手続きを取って行ったのか、どこに相談するのか?と聞きました。答えはあっさり「解りません」でした。私が結婚したのは、10年ほど前ですが結婚の名字についての質問は少なかったのかもしれません。
国際結婚には5つの姓名の選択。
婚姻した二人の名前が以下の名前の人物だったとしましょう。
外国人配偶者の姓名: John Noah Smith(ジョン ノア スミス)
日本人配偶者の姓名:伊藤 直美
選択肢は次の5つです。
1. 氏は変えない。日本の名前を使う。→ 変更せず『伊藤直美』
2. 日本姓から外国姓に変更する。→ 変更後の姓名は『スミス直美』
この場合婚姻後6か月以内に区役所に氏変更届を提出します。婚姻届と同時に出す人も多く、この変更をよく見かけますよね。6か月を過ぎても出来ますが、家庭裁判所に手続きが必要でペーパーワークも多く時間も労力も必要です。
3. 日本姓から外国性+ミドルネームと日本の名字伊藤を使う→変更後の姓名は『ノアスミス直美』
4. 日本姓から日本姓+外国姓(伊藤→スミス伊藤)に変更する。→変更後の姓名は『スミス伊藤直美』
5. 姓と名同時に変更(姓を伊藤→スミス、名を伊藤直美)する。→変更後の姓名は『スミス伊藤直美』
4と5はダブルネーム(複合姓)と呼ばれます。変更をしたい場合は、婚姻後6か月以内に手続きが必要です。家庭裁判所に法的に認めてもらうようにしなければなりません。なぜ、変更したいのかの申述書も必要です。すべての人に許可が下りるとは限りません。申述書の内容が重視され決定されます。また、家庭裁判所の審議の間に第三者が姓名を代えることについて不服申し立てをすれば姓名が変えられないケースもありえます。
将来のことを考えじっくり決めましょう。
婚姻後の姓名には、日本の戸籍上は 基本的にはカタカナ表記が使われます。婚姻の相手が韓国人、中国人は漢字が認められることもあります。しかし、日本の戸籍上使えない漢字もあるので確認が必要です。
カタカナの表記も婚姻届に記入した配偶者の姓でなければなりません。 日本語の音には訳すことが難しい外国語の音もありますが、何かに決めなくてはなりません。
一度変えた名前を簡単に元に戻すことは困難です。どの姓名で今後、暮らすのが良いのか良く検討する必要があります。
外国人と結婚をしたとき、日本人の国籍はそのまま日本国籍です。外国人配偶者が自分の国籍を失ったり、日本国籍を取得することはありません。ただし、配偶者の国の国籍法により変わることがあります。配偶者の国との二重国籍となります。
なお、日本人男性と外国人女性が結婚したときは、双方の国籍はそのままです。日本人の女性と外国人男性が結婚したときには、国により変わってきます。
アフガニスタン、イラン、エチオピア、サウジアラビアなどは届け出を出すと同時に戸籍が二重戸籍となります。日本では、二重国籍を認めていないので国籍の選択の届け出が必要になります。他に、届け出を出すと夫の国籍になることができる国もあります。エジプト、タイ、パキスタン、フランス、ブルネイなどです。
国籍取得の届出をすれば日本国籍は自動的に失われ、届出をしなければ日本国籍のままとなります。現在、私はタイに住んでいます。こちらで会うタイに嫁いだ女性はタイの国籍に変えている人も確かに多いです。
私がダブルネームを選んだわけ。
私の結婚では、先述の選択肢のうち『4 』のダブルネームを選択しました。その理由はこうです。
日本の夫婦別姓が審議されている理由と同じように私は日本で仕事を持っていました。日々人に接する仕事で名刺も渡し、また、公的書類にも名前を書かなければならない仕事をしていました。氏変更届を出し旧姓で仕事をすることは可能でしたが、書類に記入する際は、夫の姓だけになると説明をしなければならなくなり、時には個人的な所も説明がいるように思いました。
外国人との婚姻は夫婦別姓が認められているので、日本の名前で生活する選択があったと言えます。私の場合は、仕事は日本の名前に重きを置き続ける、夫の姓は例えば、夫の郵便局から届き、不在票が入るような場合、代理で郵便局に行くと本人確認が必要です。住所が同じでも名前が違うと荷物を渡してもらえないこともありました。籍を入れた後は同じ姓が入っているだけで本人確認はもちろんありますが、前よりはスムーズになりました。
子どもはどうなるのか?
私達には、子供はいません。しかし、もしいたらどうなったでしょう。
日本では、子どもは「日本人の親の戸籍に記載されている姓」を名乗ることとなっています。親は子供の将来のことを見越して名前の変更手続きを行う必要があります。
日本戸籍の姓の名前が選択されるので、戸籍上がダブルネームになっているが、子供はダブルネームを使わない日本の姓を使う、または外国人配偶者の姓のみを使うというという選択はありません。
外国人との結婚で直面する『姓』の問題。日本人同士の婚姻ならできない夫婦別姓という選択肢があるぶん多様とも言えますが、実際に決断する過程では将来を考え、じゅうぶんに検討したほうがよいでしょう。